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思い出 イン マイヘッド

 


デビューレースの思い出


Lobsterr Letter>というNewsletterを愛読している。毎週月曜日の朝7時、メールボックスに届くこのレターでは、ビジネスやカルチャー、或いは社会のあらゆるコントラスト、気候変動など、編集チームがキュレートした記事の要約が独自の視座と共に届けられる。端的に言えば、Newsletterという形式のオルタナティブメディアと表現されている。編集後記のPodcast<Lobsterr FM>も、ルーティンのひとつとしてランニングしながら欠かさず聴いている。

150%アスレチックなサービスTomo’s Pitで、いきなり何を言い出す!?と思うかもしれない。実はこのLobsterr、キュレーターのひとりがトレイルランナーで、時折スポーツやランニングについてのトピックが掲載されている。(偶然にも先週のピックアップ記事ではコートニー・ドーウォルターのマインドセットについて取り上げられていた!)

OUTLOOKという時評のコーナーでは、過去にOn Runningというエッセイや、2021年の秋にレースデビューしたその時のプリミティブな心境が綴られている。当時のNewsletter(Vol.135 OnTrails)は購読者以外が今から読むことは恐らくできないけれど、編集後記のPodcastでレースの感想が語られているのでぜひオススメしたい。エピソードの端々に、「あぁ、自分のデビューレースも同じだったな」「過呼吸になるし、足は痛くて動かないしホント辛かった...」「でもゴールした瞬間、こんな気持ちになるのは初めてだ」という、自分の経験と重なり合う瞬間が多く、それは自分以外の多くのランナーもきっと共感するはずだ。

達成感か、安堵感か、その両方か、ゴールした瞬間に自然と涙が出てくる経験は自分にもあった。初めてのトレイルランニングレース、初めてのウルトラディスタンス、初めての100マイルレース、思い返すとその全てで同じような気持ちを味わってきた(きっと全てで泣いていた気がする)。そんな初期衝動に突き動かされてここまでやってきて、自分なりのベストはまだ先にあると信じてこれからも走り続けたい。「初めて」でしか感じえない体験がある一方で、積み重ねの先にしかたどり着けない何かがあるはずで、今一度動き出すにあたって日々の原動力になっている。



ちょうど10年


そんな自分のデビューレースは2012年の第二回上州武尊山スカイビュートレイルの50km部門だった。当時、国内屈指の山岳系レースだったこの大会に無謀にもエントリーしてしまった。友達がいなかったので情報もなく、会場についてから「よくエントリーしましたね!」と言われたことを覚えている。理由は走り始めてから1ヶ月して、大会に出たいと思った時にまだ受付中だったから。なんとか完走できたものの、先の通りで着地のたびに膝は痛いし、焼けるような暑さの剣ヶ峰は本当にキツかったことをはっきりと記憶している。それ以上に、ゴールした瞬間の言葉にならない気持ちと達成感、未知の世界が広がる感覚は味わったことのないものだった。結局、上州武尊には3年連続でエントリーし、3年目の2014年大会は自分にとって初めて100kmを超えるウルトラトレイルのデビューレースにもなった。

あれからちょうど10年。年始にランニングしながら、ぼんやりと2022年のテーマを考えていた中で、原点回帰は十分な動機になる気がしていた。滅多に大会に出ない性分であることと、出るからにはしっかり準備したいという両方の理由から、明確にテーマを設定しないと走り出せない。おまけに完走目標ではハードルが低く、順位にこだわるアスリートでもないというややこしさ。ただ単に、ウルトラディスタンスという距離の中で、自分を表現をしたいという欲求・衝動に今は突き動かされている。それは、ゴールの瞬間に比べて圧倒的に長い準備期間に対してやり切れたという自信と、レースの最中にある平常と高揚のあいだ、行き交う人や仲間との交流、そんな言葉になりきらない感覚を求めている。このために体に鞭を打って、或いは時間を削ったり、日常に制限を抱えて、ようやく満足感を得られるってのはまぁまぁ狂っていると思う。ただ、そういう性分に流れ着いてしまったので納得がいくまで受け入れるしかない。(家族は良い迷惑だと思う、きっと)

トモさんというきっかけと、10年という動機が結びつけばあとはやるだけ。

きっかけと目標が結びついて、家族からの出走許可がおりた今、あとは日々積み重ねるのみ。5月中旬からTomo’s Pitでのトレーニングをはじめて、6月下旬には無事に目標となる<上州武尊山スカイビュートレイル 140km>にエントリーをした。その矢先、大雨による土砂崩れがあり広範囲にわたってコースが被害を受けたようだ。結果、2022年大会の中止が決定したと、アナウンスが流れた。他の大会同様に上州武尊もコロナ禍での中止が続いてようやく開催の目処がたった中で、今度は自然災害による中止は主催者にとって本当に辛いことだと想像する。自分としても、新鮮な気持ちで山岳レースに出ることを楽しみにしていただけに、目標を失ったこと以上の複雑な気持ちになった。

とは言え、せっかく得たトレーニングのリズムをこのまま止めてしまいたくはない。それ以上に、今回は準備からゴールまでの一連のプロセスをやり遂げることを一番に考えている。さて、どうしたものか。コーチと相談しながら今後の計画を練り直している。