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初沢リバーからこんにちは!

記録をたどれば2021年のクリスマス前後だった。高尾の冬はとにかく寒くて、そしていつまでたっても朝日はのぼらない。完成されたランナーじゃなければ、平日の早朝5:30集合なんて夢のまた夢。そう、つまり僕はランナーであり、非ランナー。後者の側に軸足を置きつつ、ランナーであるアイデンティティはつま先すれすれで地面に着いているような状態だった。これを機に、なんとかつま先から踵までが地面に触れるように、体勢を立て直したいと願っていた。実際、走らなくなってから半年以上が過ぎていた。筋力と心肺機能の低下は言わずもがな、早寝早起きのやり方すら思い出すこともできない状態だった。「きっかけさえあれば」そう思いながらも、自分自身で目標設定するまでの必然性はどこにも見当たらない。それでも「きっかけ、目標、習慣化」のどれかに巡り合うためのセンサーだけは働かせていると、突然「きっかけ」の種がやってきた。

うちの近所に ”トモさん” と呼ばれている、控えめに言っても普通じゃないランナーが(勿論、Tomo’s Pitファウンダーの井原知一さんのことだ!)ある時、「一緒に練習しようよ!」と声をかけてくれたのだ。あぁ、なんていう近所のよしみなんだ。到底 ”一緒に” なんて走れる状態じゃなかったけど、これを「きっかけに」もう一度「習慣化」に向けて頑張ろうと決心して、二つ返事でご一緒させてもらうことにした。

練習初日、集合時間は早朝5:30、待ち合わせ場所は初沢リバー沿いの公園。本来なら楽しみな約束のはずなのに、前日は緊張して眠れず、当日は「寝坊した!」と思って飛び起きたら深夜3時だった。それくらい走れる気がしなかった。結局、寝付けないまま時間がきたので、トレーニングウェアに着替えて集合場所までジョグで向かった。真冬の高尾は真っ暗で、街灯の数もまばらだ。ヘッドライト越しにいるトモさんの提案で「今日はYellow gateまで、7割くらいのペースで行こうか!」というメニューに決まる。はじめは一緒にウォームアップをして、温まった頃に設定ペースに移ったところ、ものの数分で僕の心拍は閾値を超えて時計の数字が真っ赤になっている。トモさんの背中はどんどん離れていって、差が開いているのか意識が朦朧としてるのかすらわからなくなった。Yellow gateにつく頃には身体も頭もショートしていて、リバース寸前の嗚咽に近い呼吸でなんとか意識を保っていた。内心、「これが毎週じゃ身体が持たないな」と思いながらも、真冬の朝焼けが綺麗で、久しぶりに味わう充足感だった。振り返れば、あの日の朝は止まっていた針を動かすにはじゅうぶんなきっかけだった。



似た理由で足踏みをしている人へ

 

はじめまして、矢崎智也です。元・杉並区民、現・初沢町民(高尾)のトレイルランナーです。ここ数年はウルトラディスタンスに没頭していましたが、2021年春以降は子育てを理由にトレーニングを一時停止していました。自分で言うのも何だが、それはもう美しいまでの急停止で、1ヶ月まったく走らないことも平気であった。当然、身体機能は急降下して、気持ちも収縮していく。たまに走ってもイメージと実態の乖離が甚だしい。一度落ちてしまうと練習のための練習からはじめないと、一向に走れる気配が見えてこない。大会を目標に設定したくても、家庭を理由にいまひとつ決心できない。そんな訳で走る習慣化が進まない日々が続いた。

幸運にも、真冬のある日にトモさんから誘ってもらったことがきっかけとなって、ランニングを再開することができた。一人じゃ辛い早起きも、約束をすることでリズムが生まれた。毎週早朝からリバース寸前まで追い込んで、なんとなく走れるようになってきた。もう一つのきっかけはUTMF2022。サポートとして参加したこの大会で、仲間が挑戦する姿を目の当たりにして目頭が熱くなった。同じように熱中したい、また一緒に走れるくらいのコンディションにしていきたい。サポートエリアの中で選手に触れていると、自然と沸点を超えていった。自分も、もう一度しっかりと走りたいという意志が固まって、5月からTomo’s Pitに入門させていただくことになった。とは言え持ち時間は限られている。以前の目安が週10時間のトレーニングだとしたら、頑張って捻出してせいぜい7〜8時間がアベレージだろう。だとしてもやらない理由にはならない。今現在の生活の中で発揮できる “ベスト” にフォーカスしよう。何より、ひとりじゃない。

このブログでは、ゼロからリスタートするランナーとして、Tomo’s Pitのオンラインコーチングを通じた日々のトレーニングや、心身の変化。目標設定とアプローチ。現在進行形で行っているピリオダイゼーションを、連載形式で発信していきます。似た理由で足踏みをしている人、トレーニングの方法に迷いがある人の参考になれば何よりです。どんな結果になるかは誰にもわからない。けれど、過程にこそ価値があると信じている。やりきった先には納得できる結果に出会えると、こころと身体は知っている。今が最高の瞬間という ”記憶” は、きっといつまでも塗り替えることができる。